はじめに
ゲームオーディオデザイナーとしての私は、没入型のゲーム体験を生み出す上で、視覚と聴覚の要素が及ぼす相互作用に常に魅力を感じてきました。「Hi-Fi RUSH」という 60fps のリズムアクションゲームが、ユニークなビジュアルスタイルを持っていると聞いたとき、私はこのスタイライズされた3Dトゥーン世界を生み出した技術的および芸術的な選択肢について、さらに深く掘り下げて調べる必要があると感じました。
ディファード・トゥーンレンダリングパイプライン
Tango Gameworksの開発者たちは、モダンなグラフィック機能と滑らかな60fpsのパフォーマンスを維持しつつ、3Dトゥーン世界を2D風に描画するという課題に直面しました。この目標を達成するため、彼らはUnreal Engine 4内にカスタマイズされたディファードトゥーンレンダリングパイプラインを開発しました。
トゥーンレンダリングを実際の幾何学レンダリングから切り離すことで、アーティストがトゥーンポストプロセスボリュームを使ってローカルにトゥーンスタイルを調整できるようになりました。この柔軟性により、スクリーン空間アンビエントオクルージョン (SSAO) やスクリーン空間リフレクション (SSR) など、Unreal Engine 4の既存のレンダリング機能を活用し、トゥーン美学に合わせてスタイル化することができました。
トゥーンライティングとスタイリゼーション
さらにトゥーン風の外観を強化するために、開発者はハーフトーンとハッチングラインを適用するカスタムのコミックシェーダーを実装しました。これらの要素のサイズは、シーンの輝度に応じて調整されており、奥行きと距離の減衰感を生み出しています。
また、チームはシャドウカラーボリュームとアンビエントキューブマップを活用し、アーティストが環境の色調と方向性の明るさを制御できるようにしました。これらの要素が、全体的なトゥーン調の外観と雰囲気に大きく貢献しています。
トゥーンライトとシャドウ
「Hi-Fi RUSH」チームは2トーンのライティングモデルを採用し、キーライトはフォワードレンダリングを、ローカルライトはディファードデカールライトを使用しました。さらに、ライティングとシャドウを分離するシャドウ専用ライトシステムを実装し、アーティスティックなコントロールと優れたパフォーマンスを実現しました。
環境シャドウについては、効率的で芸術的な制御が可能な静的シャドウマップシステムを活用しました。
グローバルイルミネーション
「Hi-Fi RUSH」のトゥーンシェーディングワールドにグローバルイルミネーションを統合することは、慎重な最適化を必要としました。チームはUnreal Engine 4の体積光マップシステムをカスタマイズし、ベイク時間とメモリ使用量を削減しつつ、強い光源がある領域にのみグローバルイルミネーションを選択的に適用することで、目的のトゥーン外観を維持しました。
グローバルイルミネーションライティングボリュームは、ベイキングと描画の両方に使用されており、統一された視覚的な迫力のある結果を生み出しています。
フェイスシャドウ
滑らかでアーティスト友好的なフェイシャルシャドウの実現は、さらなる課題でした。開発者はしきい値マップテクニックを採用し、頂点法線ベースのシャドウに関連する問題、すなわちフェイシャルアニメーションによる形状の破綻を解決しました。これにより、アーティストがテクスチャの修正を通してフェイシャルシャドウの形状を直感的に調整できるようになりました。
まとめ
「Hi-Fi RUSH」のビジュアルスタイルは、Tango Gameworksチームの技術力と芸術的なビジョンの賜物です。Unreal Engine 4内にカスタマイズされたディファードトゥーンレンダリングパイプラインを開発することで、彼らは2D風の魅力的なスタイルと、モダンなグラフィック機能を見事に融合させた3Dトゥーン世界を実現しました。トゥーンライティング、スタイル化、グローバルイルミネーション、そして革新的なフェイシャルシャドウへのアプローチなど、細部への入念な配慮が、この作品に独特の没入感のある視覚体験をもたらしています。
キーポイント:
- Unreal Engine 4内のカスタマイズされたディファードトゥーンレンダリングパイプライン
- 幾何学レンダリングからトゥーンレンダリングを切り離し、アーティストの制御を可能にした
- Unreal Engine 4の既存のレンダリング機能を活用してスタイル化した
- 2トーンのライティングモデルとシャドウ専用ライトを実装した
- トゥーンシェーディング環境向けにグローバルイルミネーションを最適化した
- 滑らかなフェイシャルシャドウ実現のためしきい値マップテクニックを開発した