はじめに
被写界深度は、カメラ内仮想撮影(ICVFX)ワークフローにおける永続的な課題の1つです。LEDウォール上の blur のバランスを適切に取ることは難しく、しばしば非現実的または明らかに人工的な外観を呈する撮影結果になってしまうのが現状です。本稿では、Unreal Engine 5.4 が導入した革新的なソリューション、「ICVFX 被写界深度補正機能」について探っていきます。
LEDウォールにおける被写界深度の課題
被写界深度の問題は、LEDウォールに表示する画像を生成する仮想カメラの被写界深度が実際のカメラと同じである際に発生します。これにより、LEDウォール上の画像がぼやけ、全体の写実性を損なうことになります。被写界深度をオフにすれば LEDウォール上の ぼやけは解消できますが、背景の奥行き感が失われてしまいます。絞り値やピント距離をオフセットしても満足のいく解決策は得られません。
ぼけの円(Circle of Confusion)の理解
ぼけの円(Circle of Confusion)は、カメラベースの仮想効果における被写界深度の問題を理解し、解決するための重要な概念です。ぼけの円は光の最小収束点を表し、Unreal では、カメラからの距離とピント距離に基づいてピクセルをぼかすパラメータとして使用されています。この概念を理解することが、被写界深度の問題に対する効果的な解決策を開発する上で不可欠です。
ソリューションの検討と仮想検証
Epic Gamesのチームは、ピント距離オフセット、絞り値オフセット、およびその組み合わせなど、さまざまなソリューションを試しましたが、いずれも満足のいく結果は得られませんでした。ソリューションを検証するため、仮想の被写界深度計測リグを作成し、内部で迅速に試行錯誤と共同作業を行うことができました。この仮想設定により、実世界の設定に実装する前に、ソリューションをプレビューし、検証することができました。
ICVFX 被写界深度補正機能の開発
Epic GamesのエンジニアであるAlex氏とTristan氏が開発したソリューションは、ポイントライトを二重にぼかし、ぼけの円を調整してその二重ぼけを最小化するというものです。このソリューションをルックアップテーブルとして実装したことで、Unreal内で簡単に調整できるようになりました。また、参照となる被写界深度の撮影と徹底的な検証を行い、LEDウォール上での正確な被写界深度を実現しました。
ICVFX 被写界深度補正機能の使用
ICVFX 被写界深度補正機能は、エンドディスプレイコンフィグのアクターにある「In-Camera VFX」コンポーネントに搭載されており、モーションブラーの設定と並んで配置されています。トラッキングと正確なエンドディスプレイメッシュが必要ですが、機能は寛容で、小さな不正確さも補正できます。被写界深度の倍率設定により、LEDウォール上の被写界深度を深くも浅くも調整できる創造的なコントロールが可能になりました。
まとめ
Unreal Engine 5.4 で導入された ICVFX 被写界深度補正機能は、カメラ内仮想撮影ワークフローにとって画期的な一歩です。これにより、LEDウォール上の被写界深度の不正確さという長年の課題が解決され、より現実的でimmersive な撮影が可能になりました。この強力なツールを手に入れたICVFX アーティストは、より説得力のある、視覚的に魅力的な仮想制作に集中できるようになるでしょう。
主なポイント:
- LEDウォール上の被写界深度の問題は、ICVFX ワークフローにおける永続的な課題だった
- ぼけの円の理解が、被写界深度の問題を解決するために不可欠
- Epic Gamesは、ポイントライトの二重ぼかしとぼけの円の調整によるソリューションを開発した
- Unreal Engine 5.4 の ICVFX 被写界深度補正機能は、LEDウォール上の正確な被写界深度を実現する使いやすいソリューションを提供する
- この機能により、より大きな創造性と写実性の高い仮想制作が可能になる